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307月 2022

冷たくないお水

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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 臨床実習をしていると学生さんと話をする機会があります。現在のシステムだと4年生と5年生が病院実習該当者。年齢だと若い人で22歳や23歳。自分の兄弟よりも一回りも若く、普段の診療で高齢の方が多いことを思うと、なかなか接することのない年代の方です。患者さんの病態(病気の理論)や治療方針といった話ももちろんしますが、小生自身自分と違った経験や視点を持つ人の話を聴くのは嫌いではないので、積極的に話しかけたりします。    

 

 

学生たちとの会話の話題

 最初の入りは出身地の話。鳥取大学医学部の学生の最大勢力は山陰両県ですが、全国各地から集まってきています。小生自身、旅行が好きで様々な地域に足を運んだこともあり、こういう地域に関するネタは豊富に持っていると勝手ながら思っています。特に自分の出身がある関西方面や、長いこと住んでいた沖縄県となれば細かな話ができたりします(もしかしたら一方的な盛り上がりなのかもしれませんが)。

サークルの話や、難しい試験の話も鉄板ネタなのでしょう。サークルの話は自分が所属していたものはもちろんですが、学生さんが所属しているサークルの活動の話を聞いています。特にコロナ禍となり、学生さんの課外活動にも制限が生じていることもあって、どんな活動をしているのか気になるところですし、(僕自身もそうでしたが)部活やサークルは学生の関心事としては非常に高く、そこ抜きに会話をするのは難しいだろうなぁと思っています。学生の関心事が高い、といえば難しい試験ですが、これは医学部あるあるかもしれません。代々引き継がれる?難しい試験の科目というのがあり、こうした試験についても学年を超えて話題になりやすいものでしょう。

 

 

世代の特徴を感じる機会から考えること

 先日の話題は、最近の若い人は(この書き方自体が乖離を生みそうですね)常温の水を飲む、というものでした。確か自分のロッカーからボトルのようなものを取り出して水分補給をしていた学生がいたので、「冷蔵庫を使ったらどうかい?」と話をしたところ、「常温の方が好きなんですよ」という言葉が返ってきたのでびっくりしました。水といえば冷たいものを好む、という勝手な認識がありましたが、それが覆されたような気がしたからです。そして以前目にしたビジネス番組をその時思い出しました。それはZ世代の特徴を捉えた販売戦略を紹介する番組で、あえて冷えてないペットボトル飲料水を売っている、といったものだったと記憶しています。目の前の学生を通してZ世代の特徴を目の当たりにして、文献で紹介されている事項が目の前で繰り広げられているかのような、ある種感動に似た感情をいだきました。

もともと自分が持っていた当たり前がときに時代遅れだったり、人からすると当たり前でなかったりすることがあります。自分自身、比較的フレキシビリティは自分にあると、勝手に思っていて受容はできるタイプだと思いますが、それを我がことのように実践できるか、というとやっぱり難しいです(世のトレンドだからといって、冷たくない水を積極的に飲もうとするか、と言われるとまだわざわざ選ばないだろうなぁと思うのです)。

ふと自分が年齢を重ねていくと同時に、世の流れ・潮流が変わっていく中で、得てきた自分の感覚というものを振り返ってみると、世の中の新たなトレンドをまず頭に入れて(知識)、当事者の意見を聴き(ナラティブ)、自分の行動に落とし込んだり、理解をしようとしているように思います。例えば最近の話題で言えば性の多様性でしょうか。LGBTQの方を支援していく流れが医療業界にもあり、所属するプライマリ・ケア連合学会の総会(6月に2年ぶりに対面でありました)でも発表がいくつかありました。世のトレンドというか新たな常識というか、自分の肌感覚を合わせていかないといけないな、と感じた次第です。

 

 

医学に限らず世の中の流れとともに

 医学もアップデートが激しく、自分が学生のときには出現もしていなかった薬が今や1stチョイス(第一選択薬)になる分野もあったりします。今のままでいいや、という感覚だと古い医療を提供することにもなり、患者さんに不利益が被る可能性もあります(ただし何でもかんでも新しい薬や治療法がいいというわけでもなく、実際の現場でエビデンス(証拠)が新たに出ることもあり、この辺のバランスが難しいとも思っています)。そういう意味では生涯勉強ですが、これは医学に限ったことだけではないように思います。

世の中の流れや新たな感覚ー自分にとっては当初は違和感を感じるようなトレンドであったとしても、そこはしっかりと向き合って自分の感覚に落とし込んでいきたいと思います。(ちなみに常温水は違和感を感じますが、性の多様性については当事者の方のお話をたくさん聞いていく中で違和感を感じることはなくなりました)

Author:李 瑛


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