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206月 2019

AI(人工知能)と医療

鳥取大学地域医療学講座発信のブログ「地域と医療のいま」です。
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みなさん、こんにちは。
鳥取大学医学部地域医療学講座の朴です。
昨今、目まぐるしい進化を遂げているAI(人工知能:以下、AI)の技術。様々な分野において、その活用はなされており医療の世界でも研究・開発が進められています。
今日はその、AIと医療についてお話させていただきます。

 

 

そもそも、AIって何?

AIについて辞書を引くと、

《artificial intelligence》コンピューターで、記憶・推論・判断・学習など、人間の知的機能を代行できるようにモデル化されたソフトウエア・システム。AI。(出典:デジタル大辞泉 小学館)

と、書かれています。

AIの技術には様々なレベルがあり、ここまで進化した背景には「ディープラーニング」という技術の進歩があります。
ディープラーニングとは、脳神経回路を模したニューラルネットワークという情報処理の手法を使い、コンピューター自身がデータ内にあるルールを見つけて学習ができるようにしたものです。

これまでも手法としては存在していましたが、情報処理速度が向上した事により大きく進化しました。

 

 

医療における、AIの活用事例

様々な分野で研究がなされているAIですが、医療の世界でも実際に活用されている事例が出てきています。今後、診療現場での活用を目指している進行中の研究を紹介します。

<遺伝子解析>

東京大学医科学研究所では、アメリカのIBM社「Watson(ワトソン)」を活用してがんの遺伝子解析の研究を行っています。
治療が難航していた急性骨髄性白血病の患者の遺伝子情報をワトソンで解析したところ、急性骨髄性白血病の「二次性白血病」の可能性を指摘。これを参考に治療方針を変更し、患者は退院。通院での治療を続けている。
同研究所では、がん研究に関連する約2千万件の論文をワトソンに学習させ、診断に役立てる臨床研究を行っている。

<総合診療支援>

自治医科大学が開発している「ホワイト・ジャック」は、AIによる総合診療支援をめざしています。
システムに症状を入力すると、AIが膨大なデータの中から可能性のある病名を確率の高い順に表示。
いずれは、必要な処方や検査・治療方針を提示できるよう開発を進めており、これにより医師の見落としや診断の偏りなどを回避しやすくしたり、診療の効率を上げる事を目指している。

<画像診断>

AIの医療分野への活用の中で、研究開発が進んでいるのが画像診断の分野。
この領域に取り組み、実際に成果を出しているのがアメリカのEnlitic社です。
ディープラーニングを活用してレントゲン、CTなどの画像から、がんを検出することができます。
同社のホームページによると肺がん検出率は、なんと人間の放射線診断医を5割ほど上回るといいます。

 

このように、様々な分野でAIの活用・研究が進んでいます。
これから研究が進んでいけば思いもよらないような結果を出せる事もあるかもしれません。

 

 

とはいえ、AIにできないこともある。

いくらAIが進化したとはいえ、AIにできないこともあります。

検査データや画像分析はAIが行ってくれることによって、診察の効率化が進むことは容易に考えられます。
病名を見つけ出し、症状に合った薬を処方するだけが医療であれば、いつの日か医師はAIにとって代わってしまうかもしれません。

しかし、患者さんとのコミュニケーションを図り、患者さんが必要としていること、それに対して医療ができることを一緒に探っていく事も大事な医療の側面。
病気を治すだけではなく、病気と向き合うためのサポートをする事も大切な役割なのです。

AIの活用で医療業務の補助が可能になれば、これまで以上に患者さんに向き合うための時間を持つことができるかもしれません。
AIの活用により、これまでよりも患者さんに寄り添い、さらに豊かな医療に発展することができると期待しています。

 

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