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21月 2022

本について

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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教授や教室員と話をしているとその読書の量と幅広さに驚くことが多い。どこにそんなに読む暇があるのか、と思いながら、自分も大学教員のはしくれなので、読まないと!と思いながら同僚や先輩方に触発を受けていろいろと読むようにしている。紙、電子書籍、さらに耳から。

医学生を卒業し、研修医になったときに人生で初めての給与を手にした。いろいろと使い道はあったが、そのときに大きな割合を占めたのが医学書である。医学部で医学を学んだとはいえ、実践する医療を目の前にすると知識も技術も足りない。もちろん耳学問も重要だが、自分のちからで調べることが必要になると、必要になるのが医学書だ。

なんちゃらレジデントマニュアル、研修医向けの本など、暗中模索の中様々な本を購入しては読んだ。あの頃よりは購入については減ったものの、最近でもやはり医学書は手放せない。積ん読になっている本もたくさんあるが、心に残る小説のように、この医学書は自分の臨床に影響をすごく与えた、という本もやはりある。しかし医学は日進月歩であるがため、アップデートが適宜必要となる。第1版を買って数年後に第2版を買って……ということもよくある話だ。

 

本との出会いの場

最近は医学書だけではなく、少し幅が広がった。いくつか理由はある。純粋に小説を読みたくなった(歴史小説を通勤途中に耳から聞くことが定着しており、最近はもっぱら司馬遼太郎である)。また様々な講習会(これはオンラインがメインだが)で必読書となっていたビジネス書関連も今までにないタイプの本であった。最近で言えば、組織論、ソーシャルプロジェクト、タイムマネジメント、ファシリテーションなどがそのタイプである。そして自分一人だったら手に取らないかな、というような本を選ばせてくれるのが読書会の参考図書である。

ECサイトで本を買うと便利は便利で、欲しい物が家にいながら購入することはできるのだが、興味のない分野の本を見ることはほとんどない。書店にいれば本棚を向きながら歩き、簡単に手に取る事ができる。読書会もそういう点では、興味がない分野への関心を広げてくれる貴重な機会である。(最近は行くことができていないが)教室でも医学生を対象に読書会をやっており、これに参加することで「自分一人では読まない本」について「自分一人では気づかないようなポイント」でいろいろと話しができるのが非常に楽しい。

 

 

現場にて不確実に出会った時に役立つ本

そんな本について、2021年に自分にとって初めての出来事があった。本の翻訳の出版である。昨年度まで当講座に勤めていたP先生から提案をいただいたもので、講座での仕事ではなく鳥取にゆかりのある家庭医の間で翻訳・出版の声がかかり、最終的には静岡の家庭医たちと協力しあって、出版に至った。書名は『医療における不確実性をマッピングする』(カイ書林)である。

この1、2年で知った単語にVUCAという略語がある。ビジネス業界とかではメジャーな言葉かもしれないが、V(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)、A(Ambiguity:曖昧性)の略語で、今後の予想が非常に難しい現状を示した言葉だ。確かに一寸先は闇とも言えるような状況が近年続いている。東日本大震災やコロナによる激動の変化、最近の半導体の話、ケージフリーの卵がメジャーになってきて1パック500円の時代が到来?などなど10年前には想像もつかなかったようなことが起こっている。

こうした状況は医療においても同様だ。マクロでいえば、医療制度やコロナの対応、誰も経験したことのないような超高齢社会もそうだが、それだけではない。ミクロな視点での医療現場においても不確実性に満ちている。診断、患者さんとのやりとり、マネジメントなどなどー「どうしたらよいのかわからない、次に何をしたらいいのかわからない」ということは非常に起こりうる。ところが医学生のときにそうした不確実性について学ぶことは少なくとも日本の医学部での卒前教育においては稀有なのである。この問に対してはこの答え、ということが臨床現場においては全くもって当てはまらない。だからこそ、大学を卒業して現場に出てこうした不確実性を目の当たりにすると、困ってしまい、(よくよく考えると)使えない対処法などでその場を乗り切ることがどうしてもある。

こうした不確実性に出会ったときに、どうしたらいいのかを本書では紹介されている。患者さんの置かれている状況に対して真正面から取り組むときに役立つ知識やスキルが紹介されているのだ。もともとは英国の家庭医が書いた本書だが、特定の章を小生が担当した。もともとそこまで英語を得意としていたわけではなかったが、ああでもないこうでもないと悩みながら翻訳本にたどり着いた。もし機会があったら是非手にとって読んでみてもらいたい(印税は入りません~笑)。

『医療における不確実性をマッピングする』 カイ書林
https://www.amazon.co.jp/dp/4904865588/ref=cm_sw_r_tw_dp_FZY2VK7J8CKB0G9J0

 

Author:李 瑛


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