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261月 2018

インフルエンザ検査のホント ~アウトカム重視とプロセス重視~

鳥取大学地域医療学講座発信のブログ「地域と医療のいま」です。
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インフルエンザにかかった!あなたはどうしてもらいたい?

「早く検査をしてもらいたい!」
この時期、「あやしいな?」と症状を感じた多くの患者さんが、インフルエンザの検査を希望されます。
しかし、このインフルエンザの検査、実は医学的には意味が乏しいかもしれません。
一般の人の思う医療的な正しさと、医師の考える医療的な正しさには大きな乖離があるのです。

日本の医療は「治療の結果どうなったか」より「検査して、治療すること自体」のほうが大事?

日本では、医療や医者のアウトカムやパフォーマンスを評価せず、検査や治療のプロセスを評価して、そこにお金が落ちるという傾向があります。

ここでいう医療のアウトカム、パフォーマンスとは、
医師や医療機関が、治療などによる介入によって、寿命が延びるとか、幸せな人生を送れるといった「結果」に結びついている、すなわち、質の高い医療をしているということです。

では検査や治療のプロセスとは何かというと、
どんな検査をやったかなどで、インフルエンザの検査をするといったことがこれにあたり、治療までの過程を指します。

「ともかく、検査をしてインフルエンザと確定できたほうが、タミフルも出るし、なんとなく安心する!」
という過程を、日本では最重視する傾向があるのです。

インフルエンザの検査は、見落とし率4割

インフルエンザかどうか確定してほしい…しかし、全盛期のイチローがヒットを打つより高い確率でインフルエンザを見落とします。
(感度が約50-60%、参考文献 : Chartrand Cら. Accuracy of rapidinfluenza diagnostic tests: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2012 Apr3;156(7):500-11.)
患者にとっては痛い検査ですし、医療費もかかるし、医療者として私は意味がないと考えています。
しかし、日本の医療制度上、インフルエンザの検査をしてタミフルなどの抗インフルエンザ薬を出せば、病院は利益が出ます。

インフルエンザの子をずっと看病してたお母さんは…?

症例として、子供3人がインフルエンザで看病していたお母さんが、
「熱が39度あります!明日から会社なので検査して下さい!」ということが頻繁にあるのですが、
感染症疫学の観点から言って、もうそのお母さんはインフルエンザに感染していると考えて対処する必要があります。
検査する必要はありません。
子供が3人インフルエンザに感染していて、看病していたお母さんがインフルエンザ以外の感染をきたす確率の方がずっと少ないからです。

しかし、実際お母さんからすると、
「検査してもらってインフルエンザが陽性と確定したらインフルエンザで、検査で陰性だからインフルエンザではない、仕事に行ける。」と安心したいかもしれません。
また職場から「検査して陰性か陽性か調べてこい」と指示されて来ることも多いでしょう。

しかし検査が陰性だろうと陽性だろうと、もうインフルエンザとして対応することが感染症の拡大を抑えるという意味では正しいのです。
インフルエンザに、ほぼ罹患している状態で動き回られる方が、色々な人にうつってしまうので社会的に迷惑なことになります。

タミフルが先進国で処方されない理由は…?

タミフルなどの抗インフルエンザ薬についても同じようなことが言えます。
インフルエンザの薬をもらうとすぐに治ると信じていたり、薬を飲んだのに効きが悪いと言われる方が多くおられます。
しかし、いくつかある抗インフルエンザ薬の中で最も一般的なタミフルという薬の場合、薬を飲むことによって症状はたった16.8時間短くなるだけだと言われています。
(参考:Jefferson T, ら. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 10;(4):CD008965. )
死亡率の低下や肺炎などの重症化の予防などの効果についてはあるのか、ないのか、まだ専門家の間でも議論が分かれるところです。そのほかの抗インフルエンザ薬も効果については似たり寄ったりです。

抗インフルエンザ薬のリスク

しかし、抗インフルエンザ薬を使うことで、インフルエンザが薬剤自体に耐性をもってしまうリスクがあります。
また、当然ですが薬を処方する分、お金がかかります。
5~4.5日かけて治ったのが4日で治るような、わずか1日のために負うリスクではないので、先進国では元々元気な大人にはタミフルは処方されることは少ないと言われています。

つまりインフルエンザのお母さんの治療は…

つまり子供3人インフルエンザのお母さんが検査してください!と言われたら、
医療者の本音としては…
「病院に来て検査しないでも、あなたの状況からほぼインフルエンザです。
症状を楽にするように様子をみることが一番です。
病院に来ると免疫力の低下し他多くの人にうつしてしまう可能性があるので、
家でゆっくり休んで下さい。」

というところです。

しかし、実際は職場の理解が得られなかったり、不安感が強かったりすることも多いので医療機関に来られても適切に対処しています。
もし医療機関に来てもインフルエンザの検査や薬が出ない場合、びっくりしないでくださいね。

じゃあインフルエンザの予防接種ってどうなの?した方がいいの?
それはまたぜひ別の機会で詳しくお話したいと思います。

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