「その一言」が持つ力
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最近、オンラインのセミナーで、医療従事者のためのセルフケアを題材とする会に参加しました。ワークの1つとして、自分の心を水が入ったタンクに例えると、今、水はどれぐらい入っている状態か、水が出ていってしまうのはどんなこと?水を注いでくれるのはどんなこと?を描く時間がありました。特に描いたものについて語り合うことはありませんでしたが、自分の絵を見ていると、注ぐものと出ていくものに共通して『言葉』がありました。そして、ふと以前の職場の休憩室に飾ってあった詩を思い出しました。
その一言
その一言で 励まされ
その一言で 夢を持ち
その一言で 腹が立ち
その一言で がっかりし
その一言で 泣かされる
ほんのわずかな 一言が
不思議に 大きな力持つ
ほんの一寸の 一言で
(作 高橋系吾さん)
患者さんやご家族への対応、他の医療従事者との連携において、言葉なしでよい方向に進んでいくことはありません。ただ、口から出た音が意味を持った言葉となるのは、受け取り手がいてこそであり、つまり、発した人の一言が発せられたままに相手に伝わるとは限らないのです。時に自分の発する言葉の重みに身動きをとるのが辛くなることもありますが、患者さんやご家族をはじめ、仕事を通じて関わる方々の言葉に幾度となく救われ、奮い立たされてきたことも事実です。
言葉との出会いと不思議な力
この詩の面白いなと思うところは、一人ひとりにとっての「その一言」は違って、どんな言葉になるのかな?という点と、「その一言」を発した誰かは、案外意図していないのではないかなという点です。また、「その一言」は、実生活で関わった誰かだけでなく、好きな曲の歌詞の一部だったり、画面越しに発せられた人間の言葉であったり、時代を超えた偉人や作家の言葉であったりするのではないのでしょうか。
この言葉に溢れた世界で、どんな一言に出逢い、その不思議な力で自分が、はたまた自分の人生がどう変化していくのかを楽しみつつ、たまには振り返ろうと思います。
Author:山本 栞里
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