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38月 2019

ダイエットを成就する

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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医師が患者と接する上で避けて通れないことに「行動変容」というものがある。

普通に生活していたら誰しもが薄々気づくと思うのだが、自分自身の行動を変えるというのは難しい。
人の行動を変えようとするのは尚更である。

日本プライマリケア学会によると家庭医療専門医を特徴付ける能力に「行動変容」を挙げている。
もちろん、どの科の医師も必要なスキルではあるが、家庭医は「行動変容は我々の専門の一つです」と謳っているのである。

 

ダイエットの開始。

さて、最近先輩に

「お前、患者に禁煙を勧めてるけどな、人が変わるのって難しいんだぜ?自分が長年達成できなかったことをしてみてから行動変容は語れよ」

と言われた。

自分自身が長年やりたくてできなかったこと・・・ダイエット。

高校2年生までは部活をしていて72kgでナイスボディだった僕。
部活をやめ、ポテチとお酒を主食に自堕落な生活を送り気づけば体重80kg。

お腹に脂肪がつき、立派な中年体型。
いつもいつも「ダイエットしよう」と思いながらできずに十数年。
これはまさしく行動変容にもってこいだ。

負けず嫌いの私は、先輩に「やってみろ」と言われて、「できません」なんて死んでも言いたくない性格で、ダイエットを決意。

とはいえ、出来るだけ楽に痩せたいもの。
幸い今の世の中はネットにたくさん情報が集まっている。

ネットサーフィンで集めた情報は

  • 「飲むだけで痩せるダイエット」
  • 「付けるだけで痩せるダイエット」

全くもって他力本願なダイエットの開始である。

結果・・・痩せない。

先輩に小馬鹿にされる。
そしてダイエットの邪魔をするようにビールをたくさんおごってくれた。
本当に腹の立つ良い先輩だ。

何歳になっても先輩に小馬鹿にされ、挙げ句の果てに邪魔までされるのは腹がたつもので、完全にダイエットのスイッチがONになった。

 

医学的知識を総動員してダイエットをすることにする

私は医師免許を持っている。
医学的知識を総動員してダイエットをすることにする。

基本的に考えると

消費カロリー > 摂取カロリー

にならないと痩せるわけはない。

そして、消費カロリーを上げるためには有酸素運動が効率的である。←全くもって医者としての知識を使っていない笑
しかし、これはどう考えても真理である。
食べる量は減らしたくない。
これも人間としての心理である。

 

マンナン米に手を出してみる。これならカロリーを減らすことができる。
・・・まずい。なんかコメがパラパラ、ベチョベチョである。

もち麦に切り替えてみる。
・・・これはなかなか食べやすいが、硬い・・・。
・・・!!組み合わせたらいいじゃないか!!

白米2合+マンナン米1合分(75g)+もち麦1合分(75g)+水3合分を合わせて食べると・・・デリシャス!!!
カロリー減量成功である。

 

あとは、運動。
・・・嫌い。めんどくさい。短時間で終わらせたい。

色々試して自分にあったのは腹筋ローラー20回 と スクワット20回である。

みるみる体重は落ちて75kg。
あと3kgで全盛期に戻る。
先輩に報告すると、たらふくビールをおごってくれた。

 

適切にアプローチをして患者を変えていくこと

家庭医療学で行動変容を学んでいくと、無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期と進んでいき、その段階段階でアプローチに仕方が変わってくることになっている。
これを勉強すると一見、医師の仕事は患者がどの段階にいるかを見極め、それに合わせて適切にアプローチをして患者を変えていくことに見える。

しかし自分自身の経験で行動変容を考えると、「人には変わろうとする潜在的な意識があり、それを解放し、促進すること」が、医師が患者の行動変容を行うときに重要なのではないかと考える。

つまり、「患者は自身が変わりたい事を持っており、いずれ時間をかければ自ずと変わるであったかもしれない事を、医師は後押しして少し早めてあげているだけ」が行動変容の本質なのではないだろうか。

(そう考えると、先輩は私にあった挑発をしていて、ポイントを見極めるとても素晴らしい行動変容家になってしまうのだが・・・)

当たり前のことではあるが、本当に変わりたいと思っている人は誰の助けもなく勝手に変わる。
どこまで本気で変わりたいか、がポイントであり、それを自分自身で切り開くのは難しいが、意外と誰かの後押しがあれば人は変われるのではないだろうか?

ダイエットのスイッチを押された僕は、なんとなくそう思う。

 

Author: 涌波 優


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