短歌、詠んでみました
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ムカデ出る 元気で動く 足元の 迷いはあるが 迷わず潰す
この短歌は、大山診療所の診察室にムカデが出た時に井上が詠んだ短歌です。
このときは、学生さんと一緒に患者さんの診察をしていました。患者さんとおしゃべりしているときに、井上の足元に小さなムカデがいることに患者さん・学生さん・井上が気づきました。ムカデ自体を見たのが久しぶりで、「どうしよう……潰そうか、なにかの紙で捕まえて外に出してあげようか。でもなんだか気持ち悪いし……」みたいな気持ちになりました。ただ、患者さんや学生さんにかっこいいところをみせないといけないかなあという気持ちにもなりました。ムカデを潰すことがかっこいいかどうかは脇に置いておいてください……
こんな気持ちの変遷を短歌に詠んでみました。これは、丁度このとき診察室におられた患者さんが短歌をされていて、「先生も短歌を詠んでみてはどうですか?」とおっしゃってくださっていました。そこで、このときの次の診察のときに、この短歌を詠んだことを伝えました。そうしたら、この患者さんは「うわー!!!先生、才能あるー!」と言われてしまいました。なんだかほんとうにとてもうれしい気持ちになって、今でも調子に乗ってちょこちょこ短歌を詠んでいます。
ため息は 息が整い リラックス 不幸になるか いつもの悩み
ため息をつくと「はい!幸せが逃げたー!」という人が、井上の身近にいます。なので、ため息をついたり、ため息をつきたくなったときに、いつも「ため息をつくのもいいことがあるような気もするし、でもなんだか不幸になるのかもしれないかなあ……」とふと思ってしまうようになりました。この短歌は、そんな気持ちを詠んだものです。
短歌を詠むことを勧めてくれた患者さんは、「思ったこと、そのときの情景を素直に五七五七七に当てはめればいいんです。」と教えてくれました。なので、そのまま素直に言葉にすることを意識して詠もうとしています。ただ、「五七五七七」に当てはめなければならないという制約があることで、いろいろ悩みます。この短歌の「不幸になるか」という言葉について、考えてみます。まず、「幸せが逃げた」という言葉がまず頭に浮かびました。しかし、それだと八文字になり、ほかの言葉を探し「不幸になるか」という七文字の問いの形式を思いつき、採用しました。八文字でも良ければ、問いの形式の言葉は思いつかなかったかもしれません。いま考えると、「幸せ逃げる」でもよかったかもしれませんが、疑問形にすることで、悩みの感じが表現できているなあと自画自賛しています。
こんな風に、2ヶ月くらい、あまり深く考えずに短歌の五七五七七で言葉遊びをしています。短歌を詠もうとすることで、「今自分はなにを感じているんだろう?」と短時間で振り返ることができているなあと感じています。自由と制約のバランスが素晴らしいので、短歌の五七五七七の形式が残り続けているんだろうなあとも思っています。そんな気持ちを以下のこの短歌に込めました。みなさんも、どんな自由と制約を楽しんでおられるでしょうか?
短歌には 自分の気持ち 表現の 力を感じ 無になれるかな
Author:井上 和興
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