高齢者医療にキーワードのフレイル・サルコペニアって何?〜サルコペニア編~
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みなさん、こんにちは。
鳥取大学医学部地域医療学講座の朴です。
前回から2回に分けて、フレイル・サルコペニアについてお話させていただいています。
2回目の今回は、サルコペニアについてお話させていただきたいと思います。
快活な高齢期を過ごすために重要なキーワード「サルコペニア」
「サルコペニア」は、これから高齢期を迎える中高年世代にとっても重要なキーワードでもあり、最近はテレビや書籍などでよく聞かれる言葉だと思います。
改めて、フレイルと、サルコペニアとの違いを説明します。
まず、フレイルとは、筋力や心身の活力が低下し始め、健常な状態から要介護へ移行する間の状態を言います。また、身体的な問題だけでなく精神的・社会的な要素など高齢期の問題を多面的にとらえた概念です。
それに対して、サルコペニアは身体的な問題に焦点を当てています。加齢や病気などにより、筋肉量が減少する事で握力や足・体幹など全身的に筋力が低下し、それに伴い歩行スピードが低下したり杖や手すりが必要になるなど、身体機能の低下が起こることを言います。
サルコペニアに陥る、さまざまな原因
加齢性サルコペニア | 加齢以外に、特に原因として考えられるものがないもの |
活動に起因するもの | 寝たきり・不活発な生活習慣などが原因となるもの |
疾患に起因するもの | 臓器の疾患(心臓・肺・肝臓・腎臓・脳など)、悪性腫瘍や内分泌系の疾患、関節炎など炎症性疾患などがあるもの |
栄養に起因するもの | 消化吸収不良、消化器官の疾患、食欲不振、薬の副作用による食欲低下など |
どれか一つの原因が要因となってサルコペニアになる。と、いうより原因となる要素を、いくつか持ち合わせている事が多いです。
では、サルコペニアになると、何が良くないのか?
サルコペニアに陥ると、筋力量が減る→握力などの筋力が減る→身体的に不自由な事が増えるという悪循環に陥りやすくなります。そして、身体的に不自由な事が増えてくるので活動量も減り社会的にも影響が出てくるフレイルに移行し、要介護状態に移行する可能性が高くなります。
なので、フレイルの前段階でもあるサルコペニアを早い段階で発見し、予防していく事が快活な高齢期を過ごすポイントとなるのです。
高齢者疾患の背景は、複雑なことが多い
今回、お話をしましたフレイルとサルコペニアのように、高齢者の健康状態の背景には、多くの問題が複雑に存在しています。抱えておられる疾患も、整形疾患、内臓疾患、精神疾患など様々。そこに加えて加齢や認知機能の問題、薬の副作用などといった問題も絡んできます。
複数の診療科に通う事はとても大変な事であり、社会問題としても取り上げられ始めています。こうした問題に対して、個人の価値観や生活をベースに寄り添う事が出来るのが、総合診療医です。
住み慣れた地域の中で、年をとっても、私らしく生活していく。そんな当たり前のことを続けていける人が、少しでも増えていく事を願って活動をしています。
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