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183月 2024

(2024年3月)海外研修に行ってきます

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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だいたい年に2回このブログが回ってきます。文才のある教室員の皆さんの文章を見ていると、上手に書かれるなぁと思いながらなかなか筆?指?が進みません。例えば、学生実習とかでよく学生さんに話すようなテーマをここに書いておけば、「◯◯さん、んじゃぁあとは僕のブログを読んどいてね、そっちに詳しく書いておいたから」とかできて、それはそれで役立つのでは、と思ったりもします。病気の細かな説明であれば学生が持っている教科書に載っていても、家庭医の思考だったり取り組みだったりは、普段学生さんが持っている教科書にはあまり載っていなかったりするので、ブログとして書くことが有用かもしれません。患者中心の医療の方法だったり、面談の仕方だったり、自分なりに少しずつ形作ってきたものがあるので、そういったことを今後書いてみるのも一つなのでしょう。

そうした流れでここまで書いてきましたが、今回は講座で定期的に行っている海外研修について書いてみようと思います。この文章を書いているのがあと1日で2月が終わるという、うるう日で、果たしてこの文章が年度内に公表されるのか、年度を越えてからなのかはわからないけれども、次回の海外研修の参加希望者がいればぜひ目を通していただければと思います。(そういう意味ではこのブログは学生向けのブログになってしまいますね……すいません)

 

 

コロナ禍前の当講座の海外研修 

当講座が海外研修を企画・運営しているということを聴いたことがある方もいるかと思います。コロナ禍前はその家庭医療のシステムや医学教育を見るために春に英国に行っておりました。私も2019年3月に行かせてもらいました。もともと海外旅行や放浪の旅が好きで、在学中にもアフリカのNGOの見学や、大学との交流、1ヶ月の短期留学のようなことを行いましたが、2019年の英国は医学部の教員として海外の医療機関や教育機関を見る良い機会でした。

英国という国自体行くことが初めてで、英語に苦労しながらも、英国の医療システムを目の当たりにし、日本との違いに驚きを感じたものです。すでに医師として何年か勤務した経験があっただけに、英国の家庭医のクリニックで行われている実践というものは非常に興味深いものでした。日本はフリーアクセスの制度で、どんな方でも大きな病院から小さな診療所まで受診は可能ですが、英国はまずは地域の家庭医のクリニックを受診することが原則です。また処方についてもガイドラインから逸脱しないような工夫が電子カルテに組み込まれていたり、その地域の健康度合い(家庭医クリニックがどれだけ地域の健康に寄与しているのか)といった評価がインターネットで公表もされています。日本のシステム、英国のシステムどちらが良いのか、ということをここで議論することは控えますが、コロナ禍でかかりつけ医の存在意義が問われたり、医学的に証明されていない行為を行う一部の医療者がいるような実態を見ると、エビデンスに基づいて眼の前の患者さんに責任を持って実践していく医療のあり方やそれを最大限に行うシステムの重要性を感じたものです(これは自分が家庭医だからこそ感じる視点なので、他の専門医の先生が英国のシステムを見るといろいろと問題だらけにも見えるところもあるのかと思います)

また医学部の講義にも参加させてもらいました。小生は医学教育の専門家でもなく、自分が受けた教育と本学での教育くらいしか知り得ませんが、非常に実践的なものでありました。確か医学科4年か3年のProblem Based Learningの講義だったかと記憶しています。これは大講義室で教員が学生に対して一方向で行う講義ではなく、少人数で実際またはそれに近いケースを扱いながら学んでいくタイプのもので、本学でも同様の取り組みがあります。実践的だと思ったのは、実際現場に出るとそうしたことに遭遇しそうだなぁ、悩みそうだなぁというものを取り扱いながら学生に考えさせるものでした。例えば、20代の女性が数日前から頻尿と排尿時痛を主訴に受診しました。熱はありません、といった感じで症例がプレゼンテーション(提示)されます。すると追加の問診事項は何か、検査は何を考えるのか、といったところを聴いていくわけですが、膀胱炎の診断がなされたあとに、それでは外来でどのように患者さんに説明をするのか、というところも学生に考えさせます。こうした視点は(少なくとも小生は研修医になって現場に出るまでは)まったくありませんでした。それだけではなく、仮にこの患者さんが妊娠しているとしたら、ペニシリンアレルギーがあるとしたら、などこれまた実際の現場でありえそうなセッティングを設けることで学生にいろいろと考えさせたり、調べさせたり、学生同士でディスカッションをさせたりします。よくできてるなぁと思いながら、同じようなことを本学でもできるだろうか、なんて考えたのを思い出します。

 

 

数年の空白を経て、新規開拓の地インドネシアでの研修へ 

そんなこんなで英国の研修を終えて、翌年も行こうと計画を立てていたところにコロナ禍になり、行く直前のところまで調整をしていましたが、残念ながら中止となり、数年の空白が空きました。5類になると(社会的に)海外にも行きやすくなり、再度英国に行く、ということも検討したのですが様々な事情を鑑みて新規開拓でインドネシアでプライマリーケアを学ぶ実習を計画しました。前回と違って、今回は責任者の立場です。医学生5名と教員3名で向かいます。この文章を記載しているのが、いよいよ明日から出発というところなので、果たして無事に帰ってこれるのか、どういう内容になるのか、ということはこれからのお楽しみです。英国について上記で長々と書きましたが、インドネシアについても長々と書けるくらいになりたいものです。

単に行くだけではなく、事前に準備を重ねて来ました。小生は大学勤務よりも地域の病院での勤務の時間が長いこともあり、学生さんとの打ち合わせの多くはオンラインミーティングになりましたが、そうしたミーティングを通して、インドネシアのプライマリーケアについて学んだり、医学教育や社会の課題について学びました。またインドネシアで過去にプライマリーケアの研修をしたことがなかったため、研修プログラムの内容自体を現地の大学教員と打ち合わせながら作り上げてきました。インドネシアのジャワ島にあるスマランという大きな街にある大学に行き、そこでの医学教育やインドネシアのプライマリ・ケアについての講演を聴いたり、現地医学生と日本・インドネシア各々の社会問題についてグループディスカッションを行う予定です。その他にもインドネシアでプライマリ・ケアを実践しているプスケスマス(日本でいうと保健所に臨床的な機能を兼ね合わせているイメージです)  や、診療所、さらには都市部だけではなく、田舎でのそうした活動の様子も見に行くことになっています。

今年度の研修がうまくいけば、2024年度もインドネシアのプライマリ・ケアの見学に行くことになるでしょう。おそらく海外の実態を見ることで、日本との違いや特徴、課題も見えてくるかと思います。まずは無事に行き、そして参加する学生さんが大きな学びを持ち帰ってこれるようお手伝いをしたいと思います。なお、4月26日(金)の夕方に211講義室にて、このインドネシア研修の報告会を大学にて行う予定です。2024年度の当講座の海外研修への参加を少しでも考えている学生さんはぜひ報告会に参加してみてください。参加した先輩や同輩からのお話はきっと刺激になるのではないかと思います。それでは気をつけて行ってきたいと思います。Sampai jumpa(また会いましょう)。

Author:李 瑛


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