新型コロナウイルスに対する日常の対処について
鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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科学は正解を保証してはくれません。
これまで人類の歴史の中で、誤った医療や科学が繰り返し行われてきました。
そしてその深い反省から、現在の医療では科学的知見を偏見なく評価して、現時点で科学的に支持される最高の医療を実践できるように推奨されています。それをEBM(Evidence Based Medicine)と言います。
先日、地域医療学ブログにおいて、
最後に、昨今の新型コロナウイルス騒動について。……(中略)手洗い、うがい、換気をこまめにして、長時間人と近い距離でいないこと。症状のない人のマスクは基本的に不要です。マスクが必要な人は外出を控えましょう
と記載しました。
これは現時点での様々な実験、科学的知見を踏まえた世界的な標準的な対処方法1)2)3)であり、現在でも間違った表現ではないと考えています。
しかし、米国CDC(Center for disease control)が4月3日に日中のマスクなどの“顔カバー”を推奨したこと4)を皮切りに、マスク使用に関して世界的に様々な意見が出ている状態です。
なぜ米国はそのように舵を切ったのか。
それは感染が蔓延する状況の中で、誰が感染しているのかもわからない状況で、知らずに感染者が他の人に感染させてしまうリスクを減らすためだと思われます。
すなわち、マスクが必要な人は外出を控えましょう、という表現は上記の科学的な知見から書かせていただきました。
現状での新型コロナウイルス対策
いずれにしろ、現時点での状況をまとめ、科学的知見に誠実な対策を考えてみると、以下のように言えるのではないかと私は考えています。
1. 最も優先すべき対策は、人と人の接触を減らすこと。これが最も効果が高い感染対策。
2. 次に明らかに有効であるのはもちろん手洗いうがい、そして換気を行うこと。
3. マスクはすでに感染した人の感染拡大に予防効果がある、感染していない人の感染予防には限られた効果しかない。
4. しかし、止むを得ず人と人の接触を行わなければならない時、マスクをする価値はあるかもしれない。
マスクの種別による違いもあります。
一般に病院で使用しているサージカルマスクや布マスク、N95マスクなどのマスクの種別による違いもあります。その他にも抗体検査とかPCR検査とか、はてはR0(基本再生産数)まで。これらの違いなどは別の機会に譲りますが、これまで医療者しか口にしなかったような難しい言葉まで出回っています。
不確実な状況の中でもできる対策を
込み入っていて難しいこともあるでしょうし、専門家の言っていることが二転三転しているように感じることもあるかもしれません。
一つには感染症や感染症疫学が身近なものであるにもかかわらず非常に専門性の高い領域であることが挙げられます。
私たちは車に乗ってブレーキをかけますが、一体どこがどうやって、どういうネジや装置をつけることで安全を担保しているのかを知りません。しかし車に乗らないわけにはいかないし、専門家の良心とプロフェッショナリズムを信じ、できる対策を行っていくしかありません。
二つめには専門家にもわからない未知の状況であることが挙げられると思います。
状況は刻々と変わる中で、正直、世界の誰もわからないことがたくさんあるのです。
明日転ぶかもしれないし転ばないかもしれない、なんて言われればみんな不安になります。
新型コロナウイルスに関しては、まさにいつ収束するのかも見えない状況です。
よく考えれば私たちの周りは不確実なことだらけです。会社が続くかも、私生活が安定を保つかも、人生は不確実な状況をいかに乗り越えていくかというマラソンに似ています。
“にもかかわらず”笑うとは?
ドイツのことわざで、「ユーモアとは“にもかかわらず”笑うことである」という言葉があります。
どんな状況であっても“にもかかわらず”笑えるようなユーモアを大切に、周りの人と自分を大切にしていられるかどうか。私たちが人生というマラソンをいかに走り抜けるのかが問われているように思います。
自粛、緊急事態宣言といった重苦しい状況ではありますが、大雪も地震も、歴史を振り返れば飢饉も戦争も乗り越えてきた山陰の皆さん、ユーモアを大切に、適切な対策を行なって、この状況を一緒に乗り越えていきましょう!
1)Jacobs JL, et al. Am J Infect Control. 2009;37(5):417-419.
2)Canini L, et al. PLoS One. 2010; 17;5(11):e13998.
3)瀧澤毅。千葉科学大学紀要。2010; 3: 149-60.
4)Centers for Disease Control and Prevention. Recommendation Regarding the Use of Cloth Face Coverings, Especially in Areas of Significant Community-Based Transmission. (Updated: April 3, 2020) (Accessed: April 20, 2020) (Web page: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/cloth-face-cover.html)
Author: 朴 大昊
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