おばちゃん家庭医、我が家での“包括的性教育”に挑戦中!
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みなさんこんにちは。久しぶりにおばちゃん家庭医の登場です。
我が家には8歳(小学2年生)と5歳(年中さん)の娘がおります。
子どもが育つのはあっという間ですよね。この前生まれて両腕の中におさまっていたかと思ったら、もう抱っこしようとしてもこちらの身体にこたえるように……。寝起きに米俵一俵!おんぶしておじいちゃんおばあちゃんの家に運ぶのもひと苦労です。
最近、8歳の長女は父親とお風呂に入りたがらなくなりました。去年くらいからやんわりと、「おとうちゃん、わたしが洗ってから来て」と時間差を示すようになり、最近は「着替えるまで待って」と。なんとも涙ぐましい言い回しです。なぜか風呂上りは素っ裸で歩き回っていますが……。
そして、先日ついに5歳の次女から、
「おかあちゃん、あかちゃんはどうやって生まれるの?」
来ましたね、テッパン質問!!とりあえず、母の私の答えは「それはね、お父ちゃんとお母ちゃんが話し合って、いーーーっぱいパワーを出し合って、協力したらできたの」です。間違いではないでしょ!?
子どもたちを守るための性教育。みなさんはどう考えますか?
ずっと、迷いながら考えていました『子供への性教育』。みなさんは考えたことがありますか?
私の小学生の時は、高学年になって、男女クラスを分けられて、からだのしくみや月経(生理)の話とかを聞いたような気がします。担任の男性の先生が、顔を少し赤らめて一生懸命授業をしてくれたのを覚えています。そして、今思えば親の作戦だったかもしれませんが、なぜか家にあった「からだのしくみ」とかいう児童書をこっそり一人で学びました。最近の小学校ではどうなんでしょう?
実は、我が家には保健体育教師もおります。が、性教育については私が情報を求めてもだんまりを決め込んでいます(あ、そもそも会話が乏しい夫婦でして……)。
日本の学校現場では文科省の示す学習指導要領に沿って授業が作られていますが、その学習指導要領には『性』という文字は見当たりません。いのちの大切さや性感染症の予防、正しい避妊法などを教えるのに「どうやって命が生まれてくるのか?」ということについて、(精子と卵子が受精して~)は扱うのにその手前の性交渉についてが、すっぽりと抜けているのです。医師の立場としては、まったく実践的でないと感じてしまいます。勘のいい学生であれば、「それは触れてはいけないこと」という暗黙知を与えてしまいかねません。かつての自分もそうでした。ただし、学習指導要領を逸脱した授業を行うことは教員にとっては法を犯すも同然の行為らしく、学校現場で教えられることには(今の日本の文科省の決めた範囲内では)どうしても限界があるようです。きっと現場の先生たちにも歯がゆい思いをしている方もおられることでしょう。
SNS上では、若い世代の妊娠に関する不安や、私たち子育て世代の家庭での子供への性教育をどうするか?の悩みが蔓延していますよね。問題意識があるのは当然です。
学校では語られない一方で、巷の新聞広告には性描写があふれ、決して正しいとは言えない表現を含むアダルト動画へのアクセスも容易な情報社会へと化しています。世の中では望まない妊娠やそれを取り巻く悲しい問題が次々とおこり、今回コロナ禍で登校自粛となった影響で妊娠相談件数が増加したとの報道もあります。これらは当事者の自己責任だけでしょうか?
親も学び、学校と家庭が連携をとって子どもたちを育てる
日本の性教育は完全に世界から遅れをとっているのは明らかです。先日、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)が薬局で買えるようになる方針という報道がありましたが、すでに海外の約90か国では薬局で入手できる体制が整っています。法整備は国(政府)の考え方で進むものですから、教育現場だけでなく、そもそも政府がどう考えてきたのか?というところまでさかのぼります。
【包括的性教育】という言葉があります。性教育は、『セックス(性交渉)を教えること』だけではありません。国際的に広く認知・推進されている、『性に関する知識やスキルだけでなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶ』ための重要な概念です。包括的性教育に関して、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が中心となって作成された『国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International technical guidance on sexuality education)』というガイダンスが公開されており、国際的な標準的指針として利用されています。
主なコンセプトにはこのようなものがあります。
① 人間関係 ②価値観、人権、文化、セクシュアリティ ③ジェンダーの理解 ④ 暴力、同意、安全 |
⑤健康と幸福(well-being) ⑥人間の身体と発達 ⑦セクシュアリティと性的な行動 ⑧ 性と生殖に関する健康 |
この包括的性教育は科学的根拠に基づいており、2016年の研究ではこれらの教育プログラムを行うことで、【初交年齢が遅くなる】、【性交渉の頻度が減る】、【性的パートナーの数が減る】、【リスクの高い行為が減る】、【コンドームの使用が増える】【避妊具の使用が増える(本ガイダンスではコンドームは避妊具ではなく性感染症予防手段と扱われています)】という効果があることが明らかになっています。
以上、
そして包括的性教育は幼少期から始まる継続的な教育であり、最初のステップは5~8歳とされています。こどもの成長と興味のペースに合わせて、その時に必要な情報を提供してあげることが大切なんですね。まさに我が家の場合、子供が疑問をぶつけてきた「今がチャンス!」なわけです。
学校でできないことは、親自身が学び、家庭でまずやっていく。
そう、学校も大変なんです。すべての教育を学校の先生任せにしようという気はありません。目の前に疑問を持っている我が子がいれば、答えていくのは親の責務でもあるわけです。まずは親のわたしたち自身が、自分たちの「当たり前」を見直し、真剣に向き合わなければならない問題ですよね。
我が家での性教育のファーストステップ
さっそくわたしはこの絵本『あっ!そうなんだ!性と生』(中野久恵、 北山ひと美、 星野恵、 安達倭雅子、 浅井春夫 著)を親子で読んでみました。この絵本のいいところは、
➀具体的、科学的根拠に基づいたごまかしのない解説
②子供が生き抜いていくためのソーシャルスキル(性犯罪、ジェンダー、いじめなどの対処法)についても書かれている
③イラストがポップでかわいい
④親向けの解説が充実している
気楽に嫌味なく、読める感じですね。初回は私が2人に読みました。次女は赤ちゃんの分娩の様子(お母さんの股の間からへその緒をつけた赤ちゃんが出てくる挿絵)には興味があったようでじーっと見ていましたが、後半は「つまんなーい」と言って離れていきました。長女は最後まで真面目に聴いていました。そして、何度か寝る前に一人で黙々と読み直していました。
先日の長女との会話です。
母「あの絵本でわかったことある?」
長女「うん!わかったよ。赤ちゃんは、お父さんとお母さんがチューしてくっついて、ヴァギナとペニスがくっついたらできる!」(どうやら長女はこの部分が知りたかったようです)
母「そうだね。ヴァギナは赤ちゃんができる大事なところだね~。どうやって大事にしていく?」
長女「ちゃんと洗う。他人にはさわらせない!」
母「そうだね~。〇〇ちゃんはいつになったら赤ちゃんできるようになるのかなあ?」
長女「ちまみれ?せいり?がはじまったら?」(そう、我が家では生理=月経のことを『おかあちゃん、今日“ちまみれ”だから』って説明していたんでした……そろそろ呼び方を改めなければ)
母「そうだよ。6年生くらいになったら始まるかもね……」
と、こんな感じで会話が進んでおります。
次女とはお風呂で性器の洗い方を復習したり『自分や相手を大切に思う事』、『相手が嫌だということはしないこと』、『嫌なことはちゃんと「いやです」ということ』を話したりしています。
まずは第一ステップ、踏み込んでみました!
これからも、いろんな質問が子供たちから飛んできそうですが、
私の考えでは、
【あわてない(すぐに返答をしなくてよい)】
【まずは受け止める(難しかったら子供の言葉をオウム返し)】
【決してごまかさない】
を大事にしていきたいと思います。適宜、続編があればお伝えしていきたいと思います。
私の参考にしているNPO法人ピルコンのホームページです。
ご意見ご感想などあれば、教えてくださいね~。読んでくださりありがとうございました。
Author: 紙本 美菜子
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